研究概要 |
本年度は、昨年までの成果を基に、土地利用予測モデルの改良と、植生の大気汚染ガス吸収量を評価指標とした市街化規制の評価、持続可能な市街地形態の予測を行った。研究対象地域は徳島都市圏(徳島、鳴門、小松島、松茂、北島、藍住、石井)である。 まず、昨年度の成果を基に、ニューラルネットワーク(NN)とセルオートマトン(CA)モデルを組み合わせることで、市街化予測モデルを開発した。このモデルでは、まず、NNにより360mメッシュ単位で市街地比率を予測し、この結果を市街化ポテンシャルとして用いることで、120mメッシュ単位で市街化を予測する。この2段階予測により、昨年のモデルよりも予測精度向上を図ることができた。 次に、このモデルを用いて、2010年までの市街化を予測、その結果と植生データとを重ね合わせ、植生の大気汚染ガス吸収量の変化を予測した。市街化予測では、(1)現状維持、(2)対象地域全域で区域区分を廃止した場合、(3)徳島市以外の市街化区域を調整区域にした場合、(4)1997年時点のCO2吸収量が10%減少するまで市街化を続けた場合の4つのシナリオを想定してシミュレーションを行った。 その結果、シナリオ(1)では、主に市街化区域縁辺部で、シナリオ(2)では、既存市街地周辺かつ交通アクセス性の高い地域で、シナリオ(3)では徳島市内を中心に、市街化が予測された。これらの結果を用いて大気汚染ガス吸収量を推計したところ、シナリオ(1)と(2)では、NO2とSO2吸収量に大差は見られなかったが、CO2吸収量は、シナリオ(1)の方が、(2)に比べて2,976[t/yr]多かった。シナリオ(3)では、徳島市に市街化が集中したため、徳島市のCO2吸収量が最も低くなった。シナリオ(4)の結果をみると、市街化区域縁辺部や、徳島市南部、小松島市付近を中心に市街化が予測された。今後は、これらの地域に市街化を誘導するような施策を行うことで、CO2吸収量の減少(1997年比)を10%まで抑えることができる。
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