まちづくり(社会的な計画)の中で、居場所や地域コミュニティをどのように創造することができるかの示唆を得るために、デンマークと熊本の事例を検討した。 (1)デンマークにおける研究 デンマークでは、アメリカの同時多発テロ事件以降、外国人排除の政治的傾向が顕在化しており、多国籍の者が集住する地域では、地域活力の衰退の課題が見られる。また、国籍に関わらず、失業や心身の不安、独居などによる社会的排除の問題もある。「地域再生事業(1997-)」では、地域の家を設置し、そこでは、(1)公募で選ばれたプロジェクト・リーダーが、(2)多国籍の者同士のネットワークを創造、再生することを主要な目的とし、(3)他者に目を向けるべく交流イベント(料理教室、音楽イベント、数ヶ国語によるニュースレターの発行など)を実施しながら、(4)また、子どもたちによるワークショップを開催し、大人にも地域社会に目を向けてもらい、(5)同時に、地域の家が人々の活動の拠点となるよう例えば、地域図書館に併設したり、カフェを設置するなどの工夫が見られた。他者や地域を感じ、互いのつながりを創ることが、まちづくり(社会的な計画)の理念と実際の場面で経験が蓄積されている。 (2)熊本における考察 熊本県内では、コミュニティ形成として、小学校区ごとに地域総合型スポーツクラブを設置するなどの取り組みを把握した。デンマークでの調査研究を踏まえ、「コミュニティ」の現状の示唆を得る必要から、熊本市の中心市街地の小学校区を事例に、生活環境および地域コミュニティの現状についてアンケート調査を行った。校区には単身世帯、高齢者世帯も多く、地域への関心は低い。自治会活動への参加は20%ほどにとどまり、地域イベントには関心はあるが参加したことがない者が多くを占める。しかし、関心そのものは低くなく、きっかけがない、情報が少ないなどの意見が出された。
|