本研究は、商店街組織が中心的役割を果たしながら個別店舗の業種・業態改善や住環境改善、景観づくり等を、商店街全体として戦略的に進めるためのマネジメントシステムを開発する研究である。20年度は次のことを進めた。 商い・居住・景観の創造的な協議を支えるデータベースは昨年度に枠組みを作った「地域の多元的なヒストリー・データベース」にWEBデータベース機能とgoogle mapを活用した地図情報システム機能を加えて完成させた。地図上のプロットを通して様々な地区・敷地の計画アイデアや事例が相互参照できるようになる。進行中のまちづくりで活用できるように、WEBデータベースの知識を用いることなく、現場の人(行政職員、設計者など)カミ随時更新しやすいWEBデータベースの形式を工夫した(Filemaker Pro10を使用)。この成果は21年度建築学会大会梗概で発表予定である。 テナントマネジメントシステムについては、1) 商店街まちづくり会社の市民事業による事業収入と専従職員の配置のもとで、2) 商売継続意向店主向けの改修支援、業種・業態改善支援プログラムと、3) 空き店舗・将来廃業予定店舗オーナー向けの「土地と所有の分離」によるまちづくり会社の運営によるテナントリーシング・プログラムという枠組みを確定した。対象フィールドである鶴岡市山王商店街では、これにもとづき、有限責任事業組合(LLP)の設立後1年が経ち、まちづくり会社をまもなく設立予定である。香川県庁所在地にある商店街による「土地と所有の分離」と「連鎖的共同事業」による商店街再生事例は、経済産業省の補助事業のモデルにもなっているが、これは10万都市規模の再生モデルには成り得ていない。本研究成果は、こうした地方中規模都市における、商住一体の商店街の良さを残しながらの商店街再生のための有効な方法の一つと提示できたと考える。 こられの経緯、成果は、共著「住民主体の都市計画」のなかで、事例報告と論説を記した。
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