今年度前半は研究テーマのひとつであるコジャテペ・モスク建設にまつわる経緯を整理し、その後、日本建築学会(9月)およびヘレニズム〜イスラーム考古学研究会(10月)にて、コジャテペ・モスクのデザイン変更の背景について口頭発表を行った。これまでイスラーム対世俗主義という構図で論を進めてきたが、トルコ以外(東南アジア、南アジア等)の専門家からは、イスラームという大きな枠組みも不可欠だが、「トルコ」というアイデンティティーの模索という視点も重要という指摘を受けた。来年度はこの点にも着目し、「トルコ」のアイデンティティーを模索する他の事例(都市再生事業等)にも対象を拡大し、視点を広げて研究をすすめていきたいと考えている。 9月後半には3週間のトルコ現地調査を実施した。共和制移行後のトルコにおける建築教育改革、外国人建築家の活躍に関連する日本国内では入手不可能な図書、逐次刊行物、建築関連の学術雑誌の収集・整理を行った。また、トルコの宗務庁を訪問し、1923年に共和制に移行して以後の全国のモスク建設件数に関するデータ、ならびに宗務庁が公開している「理想的モスクのプロポーション」に関する文書の提供を受けた。それらの資料とともに、イスタンブル工科大学建築学部ゼイネプ・アフンバイ教授を訪問し、研究テーマに関する意見交換を行った。トルコで入手できなかった資料については、1月に米国ハーバード大学図書館にて収集・整理を行った。 海外調査の後は、トルコと米国で収集した資料の整理を行った。現在、それらから得られた知見のとりまとめを行っている。
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