本年度は、1915年に京都で開催された大典記念京都博覧会と1928年に京都で開催された大礼記念京都大博覧会、および1903年に大阪で開催された第5回内国勧業博覧会の資料収集を重点的に行なった。資料調査は、国立国会図書館や京都府立総合資料館、大阪府立中之島図書館、尼崎市教育委員会などで行ない、関連する雑誌資料や商工会議所資料のほか、これらの博覧会に合わせて発行された観光案内書や錦絵などを収集した。 京都で開催された大典記念京都博覧会と大礼記念京都大博覧会は、いずれも天皇の大典・大礼に合わせて開催されたものである。その際、都市部では複数の公共的施設が設置され、京都の観光化に貢献した様子が見て取れた。また1895年に京都で開催された平安遷都千百年紀念祭および第4回内国勧業博覧会のように、強く歴史を意識した演出は見られないが、都市を装飾やイルミネーションで飾り立て、都市全体が大衆の空間として演出された点に特徴が読み取れた。一方第5回内国勧業博覧会では、新たな都市施設が建設され道路整備などが行われたほか、鉄道を利用して各地から大阪や西日本の各地への観光客の誘致が行われ、多数の錦絵や観光案内書が発行された。それは、平安遷都千百年紀念祭および第4回内国勧業博覧会開催時の観光化の手法を引き継ぐものであったと言える。 今回の考察対象は、1895年の平安遷都千百年紀念祭および第4回内国勧業博覧会以降の、国家による博覧会もしくは国家イベントに合わせて開催された博覧会であったが、平安遷都千百年紀念祭および第4回内国勧業博覧会開催時に確立された都市の観光化の手法が引き継がれた部分と変容した部分が見られた。
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