研究概要 |
本研究は,電子線エネルギー損失分光(EELS)・X線吸収分光(XAFS)及び量子化学計算の研究要素技術を総合し,高温Li電池正極材料の容量劣化領域の特定・劣化抑制ドーパントの状態分析から,Li吸蔵脱離パスを制御した劣化し難い材料の設計指針を示すことを目的とする.具体的には次の2点を遂行する. 1)容量劣化領域の特定 2)ドーパントの局所構造とLi拡散への影響 この2つの目的のための研究は並行して行っており,本年度において問題解決への大づかみな描像を得ている.即ち,1)に関しては,EELSのエネルギーフィルタ像の画像演算及びEDXマッピングを演算することで,正極活物質結晶粒の表面近傍で酸素が欠損する異常領域が確認された.2)に関しては分光実験結果と理論計算スペクトルを比較し,ドーパント占有サイトについて知見を得た上で,ドーパントが周囲のイオン結合を強化することを示した.これらの成果は論文投稿中であり,更に平成19年度の米国電気化学会で発表を行うことにより,広く世界にアピールする予定である. この2つの目的に関連する要素技術に関する研究として以下の成果を得た. (1)EELS遷移金属L2・L3端のエネルギーフィルタ像を用いた画像演算を,そのピーク強度比の変化を第一原理計算で得られる電子状態から理解した上で水素吸蔵した鉄カーバイドについて試みた. (2)EELSのシグナルを鋭敏にとるためのデコンボリューション手法を共同研究者とともに開発し,Liイオン電池正極ドーパントからのスペクトルに適用し,放射光を用いて取得したスペクトルとほぼ同じエネルギー分解能であることを示した.
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