我々は、熱処理を必要としない手法(Ex-situ法)でMgB_2超伝導体を線材化し、その臨界電流密度を向上させるため、(1)高性能なEx-situ MgB_2線材を実現できるMgB_2粉体の作製指針の確立と、(2)化学的な手法でMgB_2粉体を作製する技術の開発を目的とした基礎研究を行っている。 平成19年度は、(1)先年度の成果を詳細に調べ、Ex-situ線材用のMgB_2粉体には、〜2.5GPa程度の高圧力で粉体成型したペレットを焼成・粉砕して得られる粉体を用いて線材を作製した場合、超伝導コアの粒界結合性が向上することを明らかにした。この原因は、X線回折などでは検知しづらい微視的な焼成度合いの違いに起因すると考えられるが、それが、MgB_2そのものの微視的な物性の違いか粒成長の違い(それによる粉体表面の劣化状態の違い)か(あるいは両方に影響を受けているのか)は、未だ不明であり、これを明らかにすることが次の課題である。一方、(2)化学的な手法でMgB_2粉体を作製する研究は、高純度化でかなり苦戦している。反応系の単純化、実験環境の不活性化、新規道具の作製などで試行錯誤を繰り返してきたが、今後は、出発原料や反応溶媒なども変更したいと考えており、更に、作製できている微量のMgB_2試料を評価できるようにするなど、多角的なアプローチで、少しでも研究を進展させたいと考えている。研究予算は、グローブボックスの購入と試薬や粉体成型用品などの消耗品類の購入に使用した。
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