コヒーレントX線回折顕微鏡(CXDM)が新しいX線顕微法として注目を集めている。原理的にCXDMは入射X線の波長程度の空間分解能を持った実像を再構成可能であるが、実際には入射X線の強度およびX線検出器の性能に問題があり、その100分の1程度の空間分解能しか実現できていない。この問題を解決する一つの方法が超解像法などの数値解析的な手法を使って、測定された実験データから測定できない実験データを推定し、結果として再構成像の分解能を向上させることである。本研究では、CXDMのための超解像アルゴリズムを開発し、CXDMによる金属材料のその場観察測定実現を目指している。本年度はアルゴリズム開発専用の計算機を導入し、計算機シミュレーションによって様々な方法を試みた。その結果、良好な結果が以下に述べる二つの方法で得られた:(1)位相回復アルゴリズムであるHybrid-Input-Output(HIO)アルゴリズムに再生像の強度が不連続になるような拘束条件を付加する。(2)HIOアルゴリズムで得られた分解能の悪い再構成像を初期値として最大エントロピー法を適用する。どちらの方法でも再構成像の空間分解能が向上した。また、これらの手法を実験データに適用するために、大型放射光施設SPring-8においてコヒーレントX線回折顕微鏡装置を開発し、アルミニウム合金および錫亜鉛共晶合金粒子のコヒーレントX線回折測定を行い、良質なコヒーレントX線回折データを得ることに成功した。
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