ガラスは優れた光学的特性を持ち、また多様な機能性イオンを構造内に導入可能である非常に有用な光学材料である。申請者はこれまで、バルク体の多孔質ガラスを作製し、ガラスとマクロ孔の屈折率差に起因する多重散乱を利用することにより、可視光のバルク内部への局在化およびこれを用いたレーザー発振・光メモリー効果など光機能性の発現を試みてきた。しかしながら、研究を進めていくうちに、可視光を強く散乱するサブミクロンサイズの細孔を持つガラスに入射した光はほとんどが表面近傍で散乱され、内部には届かないことがわかった。すなわち、光機能性に有効に寄与しているのはバルク全体ではなく表面近傍のみである。 この知見を踏まえ、本研究はサブミクロンサイズの表面加工を施すことで、ガラスに光機能性を付与することを目的とする。その第一段階として、科学研究費が交付される2年間で新たなガラスの表面微細加工法を提案し、その適用範囲を検討する。具体的な方法として、無機ガラスをガラス転移温度(Tg)付近で加熱し、電圧(電場E〜107-8Vm-1)を印加し、イオンの移動を誘起し微構造を作製する。 平成18年度の研究により、銀イオンを含んだテルライトガラスをTg付近で加熱し、直流電圧を印加することでアノード側電極近傍に選択的に銀微粒子が析出することがわかった。また、銀析出の機構を調べる中で、試料とステンレス電極の間に挟んだカバーガラスから試料中にアルカリイオン(主にナトリウムイオン)が流入し、これが銀析出に大きくかかわっていることがわかった。また、電圧印加後の試料で第2高調波発生(SHG)が観測されることもわかった。
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