研究概要 |
本研究では, 系統的にマトリクス組成を変化させたフッ化物ガラスに遷移金属イオンをドープし, その原子価の組成依存性に及ぼすガラスマトリクス効果について, フッ化物ガラスの塩基度およびガラス構造によるsite selectivityに着目し, 解明することを目的とした. さらに, 筆者独自の研究成果である酸化物ガラスにおける遷移金属イオンのredoxの形態とフッ化物ガラスでの研究結果を比較・総括し, redoxの形態に及ぼすガラスマトリクス効果を体系化するとともに, 遷移金属イオンドープフッ化物ガラスによる新規フォトニクスデバイス開発のための組成設計指針の確立を目指す. 多元系フッ化物ガラスにおける遷移金属イオンのredoxの組成依存性を整理, 解明するために, 塩基度を反映した独自の組成パラメータの適用を試みた. また, フッ化物ガラスにおける遷移金属イオンのredox typeの新しい分類法について検討した. 通常, ガラスにドープした遷移金属イオンのredoxは熱力学的因子で説明することができる. これに対し, フツリン酸塩系ガラスでは, リン酸特有のP=0二重結合サイトにドープした遷移金属イオンが3価の状態で固定化されることを見出した. このようなredoxを構造的redoxと定義した. フッ化物ガラスでは, 本質的に気相とガラス融体の間でフッ素の出入りが行われない, 酸化物ガラスと比較してガラス構造の多様性が少ない, などによって, ドープした遷移金属イオンの原子価は基本的にドーパント原料における原子価がそのままフッ化物ガラス中で保存される傾向にあった. 以上の知見に基づいて, 遷移金属イオンドープフッ化物ガラスによる新規フォトニクスデバイス開発のための組成設計指針について総括することができた.
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