研究課題
本研究では、「Y,Bi系高温超伝導体で確認している可視光誘起構造変化」に焦点をあて、光誘起構造変化により実現する光ドーピング、絶縁体-超伝導転移など独自の光特性制御技術を巧みに利用し、超伝導ナノ素子の作製と高次機能の創製を試みた。本年度は、YBa_2Cu_3O_<7-d>(Y123)およびBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+d>(Bi2212)をモデルケースに、近接場光学顕微鏡(SNOM)を利用したナノ光書き込みにより、ナノドット、ナノ細線、ナノ接合などの微細素子を作製し、その特性評価を行った。c軸配向Y123絶縁性薄膜(YBa_2Cu_3O_<6.35>)におけるナノ細線の書き込み実験では、局所的に金属状態を誘起できることを確認した。また、この光誘起ナノ細線では、T_c=10Kの超伝導特性を示し、SNOMを利用した光相制御技術によりY123絶縁体の望みの領域に望みの超伝導ナノ細線を作製できることが明らかとなった。さらに、c軸配向Bi2212薄膜(T_c=80K)に対し、SNOMプローブ(開口径30nm)を用いた光相制御により、光準安定相のナノドットが高密度に分布した微細構造を作製した。特徴的な変化は、臨界電流密度J_c特性で観測され、30〜50nmサイズのナノドットが約50nmの間隔で高密度配列した試料では、J_cがナノドット生成前に対し5倍程度向上し、近接場光書き込みしたナノドットがピン止め中心として機能していることが明らかとなった。高温超伝導体と同様のナノスケールの光相制御は、近年メモリー材料として注目を集めているBi層状構造強誘電体Bi_4Ti_3O_<12>でも成功し、光の波長程度の2次元周期をもつ迷路状のナノパターンドメインを作製することが可能となった。
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