研究概要 |
本年度は,構造変化の動的観察のための装置立ち上げを行った.既存の高温吹きつけ装置の温度を安定化し,温風ガスによる湿度を低減させるために,高純度窒素ガスをバッファーガスとして使用可能な窒素ガス連続供給システムを増設した.また,キャピラリー試料を用い1000℃近くの高温観察を可能に出来るよう,半密閉型チャンバーを有する専用高温システムの開発も平行して進めている. 物質探索として,固相反応法を用いて新規層状ケイ酸塩PLS-3およびPLS-4の合成に成功し(国内・国際)学会発表を行った.原料がシリカと有機アミンのみを原料に用い自己静圧かで加熱するだけのシンプルな合成法で,これまでの層状ケイ酸塩の合成に比べ,反応時間が24時間程度非常に短いことを大きな特徴とする. これらの結晶構造について当該システムを使って未知構造解析を行った.その結果,PLS-3は基本構造が既知層状ケイ酸塩PREFERに類似し,PLS-4は代表者が合成した層状ケイ酸塩PLS-1に似ていることが明らかとなった.さらに,この2つの化合物は約250℃以上で,層間のシラノール基が脱水重縮合によって架橋し,それぞれFER型とCDO型の高シリカゼオライトになることを明らかにした.脱水重縮合の過程を窒素ガス吸着で調べたところ,250℃程度の熱処理でも,高いガス吸着能を示し,400℃程度の加熱で完全に架橋することが明らかとなった.また両者とも相体圧の高い領域(大気圧近傍)で,ガス吸着表面積が著しく増加するという吸着特性を示した.これは非常に小さな結晶粒子がさらに高密度に凝集した結晶形態を有していることに起因していると考えられる.またこれまで開発した層状ケイ酸塩を用い,層間にSiO4ユニットを規則的にインターカレートさせ,それにより隣接レイヤーを架橋させることで,新しいナノ多孔体の調製にも成功した.
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