本研究は、水熱ホットプレス法による、ハイドロキシアパタイト(HA)セラミックスとチタン(Ti)金属の低温接合メカニズムの解明を目的とするものである。 得られた接合体のHA/Ti界面近傍をアルゴンイオンビームでラッピングし、走査型電子顕微鏡(SEM)で直接観察を行った。SEM観察結果から、何らかの化学反応により形成される第3相を介して、HA/Ti接合が形成されていることを示唆する物質を検出することに成功した。この第3相物質はTi上に形成され、ナノオーダーレベルの非常に薄い層をTi表面に形成していた。この結果から、水熱ホットプレスにおけるHAセラミックス/Ti金属接合機構を、界面化学反応によるものであるという結論を得た。 この結果に基づき、HA/Ti接合界面における第3相をTi表面に積極的に導入するために、Ti表面改質による接合挙動の影響に関する調査を行った。水熱ホットプレス処理前に、Ti表面をアルカリ溶液、特に5mol/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液への浸漬するによるTi表面改質を行った。これにより界面化学反応による第3相形成は、溶液処理の条件によって形成される反応層厚さや結晶相がそれぞれ異なることも確認された。また接合強度向上が実現される水酸化ナトリウム溶液処理条件(濃度:5mol/l以上、温度:150℃、処理時間:1時間)を見出すことに成功し、水熱処理条件下の表面処理が特に有効であることがわかった。 界面化学反応HAセラミックス/Ti金属接合条件の最適化のための水熱ホットプレス処理条件領域図の作成した。これにより出発原料からHAセラミックスへの完全反応とTiとの接合を両立する水熱ホットプレス条件(温度:150℃、圧力:40MPa、反応時間:12時間)を見出した。
|