本研究では、超弾性回復歪みが大きく(6%〜8%)かっ超弾性変形応力が大きい(600MPa以上)Ti合金を開発することを目的とした。合金組成を系統的に変えたTi-Zr-Nb、Ti-Zr-Mo、Ti-Zr-Ta、Ti-Nb、Ti-Nb-(Zr、Ta、Pt)などの様々な合金を作製し、変態特性と変形挙動の評価を行い、各添加元素が結晶構造、相安定性、マルテンサイト変態挙動、超弾性特性に及ぼす影響を定量的に調べた。Ti-Zr系合金において、添加元素によりマルテンサイト変態温度を下げる効果が異なり、1at%添加によりNbは40K、Taは30K、Zrは35K変態温度を下げることが分かった。MoとPtはマルテンサイト変体温度を約160K低下させた。格子定数を測定し変態歪みを算出すると、Ti-Zr-(Nb、Ta)合金において、Ta、Nb及びZrを添加すると変態歪みは減少することがわかった。変態歪みの減少率はZr<Ta<Nbの順で大きくなった。従って、変態温度に及ぼす組成の影響が変態歪みに及ぼす影響と異なるため、変態温度を一定に保っ条件でNb濃度を減らし、Zr濃度を増やすことで大きな変態歪みの超弾性が得られることがわかった。Zrが12〜24at%程度のTi-Zr-Nb系合金で6%以上の大きい超弾性回復歪みが得られ、Ti-Nb系合金に比べ3倍以上の大きな回復歪みを示した。一方、Ti-Zr-Mo、Ti-Zr-Taは超弾性を示す組成では、Ti-Zr-Nb系合金に比べ冷問加工性が乏しいことが分かった。また、Ti-Nb系合金ではNb濃度を減少させ、Zr、Pt、Moなどを添加すると超弾性回復歪みが増加することも分かった。
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