研究概要 |
βチタン形状記憶合金において格子定数の組成依存性を系統的に調査し,理論上マルテンサイトが無双晶となる組成(C_0)を同定した.C_0近傍において透過型電子顕微鏡観察を行ったところ,格子変形主歪みの一つη_3が0.008を超えない範囲であればC_0でなくてもマルテンサイトが無双晶化していることが分かった.無双晶化の閾値(η_3<0.008)の存在は,本質的には内部双晶形成が界面ミスフィットによる弾性歪みを駆動力としていることから理解される.上記の無双晶マルテンサイトを有するβチタン形状記憶合金において,内部摩擦測定を行い力学的エネルギーの損失挙動を調べた.その結果マルテンサイト変態時における内部摩擦は変態歪みと外力の相互作用エネルギーに比例することがわかり,内部双晶の有無には依存しなかった.一方材料がマルテンサイト単相である場合には,内部摩擦はマルテンサイト相聞の双晶変形による再配列挙動に大きく依存することを明らかとした. TiAu形状記憶合金は申請者らが開発を進めている高温駆動形状記憶合金であるが結晶学的データがほとんど存在しないため,まずTiAu2元系における格子定数とマルテンサイト内部双晶を調べた.その結果TiAu2元系においては無双晶組成は存在せず,マルテンサイトは全て(111)第一種双晶を内部双晶としていることが分かった.マルテンサイト変態現象論解析による計算の結果,これらの内部双晶は界面ミスフィットの緩和を目的としたものであることが分かったので,第3元素を加え,格子定数を変化させることによってβチタンと同様に無双晶条件を満足できると予想している. この様に平成18年度には主にβチタン形状記憶合金,Ti-Au系形状記憶合金の格子定数,内部組織を詳細に調べて無双晶条件の同定を行うとともに,内部双晶と内部摩擦の関係を結晶学的な側面を一部明らかとした.
|