光ファイバ通信の普及と通信容量の拡大に伴い波長多重技術が実用化され、今後のさらなる拡大に向けて、光増幅器の高出力化が求められている。石英系光ファイバの低損失波長域である1550nm帯で光増幅が可能なErをドープした光ファイバ増幅器が用いられ、その研究が盛んに行われている。新たな酸化物系の光増幅器用材料を開発することが本研究の目的である。 本研究期間では、Erが構成元素になっている酸化物として、Er_3Al_50_<12>、Er_3Ga_5O_<12>、Er_2Ti_2O_7、Er_2Sn_2O_7、また、Erが構成元素を置換することができる酸化物として、Er : Y_3Al_5O_<12>、Er : Y_2Ti_2O_7を焼結合成により作製し、評価を行った。Arレーザー(488nm)で励起し、1550nm帯のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを測定し、さらに、それぞれについて吸収スペクトルも測定した。また、Erまわりの局所構造に基づいてEr-4f軌道の多重項エネルギー準位を計算し、理論吸収スペクトルを求めた。 Er_3Al_5O_<12>とEr_3Ga_5O_<12>はともにガーネットであり、それらのPLスペクトルがピーク波長および強度は一致はしていないが、鋭いピークがたくさんあり、ピークの塊が4つで構成されている点が共通していることが分かった。また、Er_2Ti_2O_7とEr_2Sn_2O_7はともにパイロクロアであり、この場合も、ガーネットの場合と同様に、PLスペクトルのピーク波長および強度は一致していないが、スペクトルの外形は類似していることが分かった。また、計算から得られた多重項エネルギーは結晶場が過大に評価されていることが分かった。 Er_3Al_5O_<12>とEr : Y_3Al_5O_<12>はともにガーネットで同じ空間群、またEr_2Ti_2O_7とEr : Y_2Ti_2O_7はともにパイロクロアで同じ空間群であり、Er : Y_3Al_5O_<12>とEr : Y_2Ti_2O_7ではErはYサイトを置換している。よく知られているように、Er : Y_3Al_5O_<12>は非常に強く発光し、Er_3Al_5O_<12>の約17倍の強度であり、またピーク波長の違いはわずかであった。Er_2Ti_2O_7とEr : Y_2Ti_2O_7の場合も同様にEr : Y_2Ti_2O_7がEr_2Ti_2O_7の約14倍の強度で強く光り、ピーク波長の違いもわずかであることが分かった。
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