本研究では、SiCデバイス実用化に向け提案されているMOSFET型パワーデバイスに不可欠な「p型とn型の両伝導型SiC半導体(同一ウェハー)上に接合させ、電極/SiC界面で"n型に電子"を"p型に空孔"を同時に(パラレル)輸送させる」性質を有する特殊(オーム性)電極を作製した。特にNi-Ti-Al系合金(金属多層薄膜)を用いて電極が両伝導型特性を有する理由(電流輸送機構)を電極特性と微細構造の相関性から究明を目指した。 本研究で作製したNi/Ti/Al三元系多層金属薄膜電極材は高温高真空熱処理により、SiC半導体基板との界面反応によりTiCとNi-Si合金の複化合物相が形成した。特に両伝導:型ヘオーム性(低抵抗電流輸送)を示したNi(20nm)/Ti(50nm)/Al(50〜70nm)電極材では、透過電子顕微鏡観察により結晶粒径が数十nm程度の微細粒のTiC相とNi-Si合金相がともに基板界面に接合していることが明かとなった。p型のみにオーム性を示すNi(20mm)/Ti(50nm)/Al(90nm)電極材の解析から、p型ヘオーム性を示すのはTiCであることが明らかになった。一方、Ni-Si合金相は従来よりn型ヘオーム性を示す低接触抵抗な物質とされていることから、両伝導型ヘオーム性を示す膜厚のサンプルではp型SiCへはTiCが、n型SiCへはNi-Si合金相が電流輸送を担っていると考えられる。また、両伝導型ヘオーム性を示す電極材における接触抵抗率はpおよびn型ともに10^<-3>Ω-cm^2程度であり、実用化に必要とされるまで抵抗率を低減するには至らなかった。デバイスへの応用・実用化に際しては特に電流輸送を担うn型SiCとの接触抵抗を低減する必要があり10^<-5>Ω-cm^2以下の値が必要とされている。低抵抗化の実現には本研究により明らかとなった電流輸送機構をもとに、材料選択や成膜・熱処理条件の最適化、微細組織制御等によりデバイス要求値の実現が望まれる。
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