CAD/CAMプロセスの光造形法を用いて金属製の3次元格子を形成し、ブラッグ回折により電磁波を制御できる新しい機能材料の作製を目標に研究を進めた。周期構造によって電磁波を完全反射する金属製フォトニック結晶の開発を目指すものである。具体的には直径1〜2mm程度のアルミニウム合金製ロッドを3次元的に組み合わせてダイヤモンド型の格子構造を形成し、次世代の高速大容量通信を担う周波数30〜100GHzのミリ波帯域において電磁波制御の可能性を調査した。実際の金属製フォトニック結晶の開発においては、以下に述べる作製・評価・解析の3段階を経ることが必要である。(1)作製段階:CAD/CAMの光造形法と高温焼結を組み合わせて健全なセラミック製鋳型を形成する技術や、真空鋳造により金属製の3次元格子を精密に成型する技術などを確立する。(2)評価段階:ネットワークアナライザーやホーンアンテナ等のミリ波計測機器により、指向性の高い電磁波を金属製フォトニック結晶に照射し、結晶構造の方位と電磁波伝播の関係を明らかにする。(3)解析段階:有限要素法による電磁気シミュレーションとミリ波の計測結果を比較検討することで、金属製格子の間隔と回折が生じる波長域の関係など結晶構造の設計法を構築する。本年度の研究によって、(1)作製段階における基礎的な技術が確立され、サンプルの作製や構造の制御が可能な段階に到達した。また(2)評価段階と(3)解析段階についても必要な機材などの調達や整備が完了しており、来年度はそれぞれの研究段階において得られた知見を総合しすることで、ミリ波制御用デバイスの試作についても検討する考えである。
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