研究概要 |
酸化反応を利用した金属ナノ粒子の中空化挙動を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて調査した。Zn,Cu,およびAl酸化物ナノ粒子の中空化現象が見出されたので,その結果を報告する。 (1)Zn,Cu,AlおよびPbナノ粒子の酸化挙動と中空化 Zn,Cu,AlおよびPbナノ粒子(粒径6〜40nm)を大気中にて室温〜150℃の温度範囲で酸化させ,酸化後の粒子の形態および構造変化をTEMで観察した。Zn,CuおよびAlナノ粒子を酸化させると,内部に孔の空いた中空状粒子が形成した。中空粒子はZnOおよびCu_2Oと同定されたが,Alの酸化物粒子はアモルファスであった。一方,Pbを酸化させると中空化せず緻密なPbO粒子が形成した。金属の酸化は,金属/酸化物/酸素の反応系で進行する。Zn,CuおよびAlの酸化過程では,酸化層中を外方へ移動する金属イオンの拡散によって酸化が進行する。実際に,これらの金属酸化物における自己拡散係数の文献値を見ると,金属イオンの拡散係数が酸素イオンのものに比べ,数桁程度高く,特に低温ではその差が顕著となる。金属イオンの外方拡散が非常に速いため,金属側では過飽和空孔が生成し集合化する。粒子の場合は内部の金属原子数が有限であるため,すべての金属原子が酸化層へ移動し酸素との反応で消費されると,酸化反応の完了とともに内部に空孔の集合体である,ナノ孔,を有する中空酸化物粒子が形成されることが明らかとなった。一方,Pbの酸化過程では酸素イオンが酸化層を内方へ拡散することによって,酸化が進行することが知られている。この場合,金属側に原子空孔は集積されない。4つのナノ粒子の酸化挙動を比較した結果,酸化反応によって金属ナノ粒子が形成するには,酸化物中の金属イオンの拡散が迷いことが条件となることが明らかとなった。 (2)Zn,Cu,Alナノ粒子の酸化特性と中空化の条件 ZnおよびAlは,初期粒径がそれぞれ20および8nm以下の粒子から中空状酸化物粒子が得られるが,それ以上の粒子を150℃で長時間酸化させても酸化層は成長しない。一方,Cuの場合は初期粒径によらず,酸化時間を変えることで中空状粒子が形成される。Cu_2Oは,ZnOおよびAl_2O_3に比べ高い拡散性をもち,100℃付近でもnmオーダーの原子移動が起こりうる。比較的大きいCu粒子でも酸化によって中空化する結果は,Cu_2Oの高い拡散性によって説明される。
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