研究概要 |
本研究は電子顕微鏡等の微構造解析装置を用いてセラミック材料の表面近傍の格子欠陥解析を行うと同時に,内部欠陥の新しい解析法を開発するものである.今年度,圧電セラミック結晶の1つLiNb03結晶に対して,応力負荷された圧電単結晶における内部ひずみや表面電荷の変化によって直接観察される微構造の変化をSEMで詳細に観察し,そのメカニズムについて考察を行った.また,結晶方位の異なる試料を用いて,その違いによる微構造変化やビッカース硬さの異方性の検討を行った.試料にはZカットとXカットのLiNbO3単結晶基板を用い,それぞれの試料にビッカース圧子打ち込み試験を行った後,SEMで観察を行った.ビッカース硬さ試験の結果,LiNtb03は<0001>方向に塑性変形を起こしやすいことが明らかとなった.これはLiNbO3が三方晶系の結晶構造であるため,結晶の塑性に異方性が存在しているためだと考えられる.Zカット試料,Xカット試料のそれぞれにビッカース圧子打ち込み試験を行い,曲げ応力負荷の有無による圧痕近傍の像変化の検討を行った結果,Zカット試料では像に顕著な変化は見られなかったが,Xカット試料では,像のみが分極方向に顕著な伸びを示すことが分かった.その原因として,曲げ応力負荷に起因する表面近傍の電界発生等によって結像に関わる電子線の流れが分極方向に曲げられていると考えられた.本現象は,一般の磁界コイルではない電子線を制御する新しい方法を提案できる可能性を秘めている.
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