Ni_3Alは水素製造触媒として機能する。本研究では、触媒活性の向上を狙って、Ni_3Alをナノ粒子化してNiマトリックス中に高密度に分散させた複相ナノ構造の形成を目指した。前年度までに、Ni_3Al/Ni複相単結晶合金を強冷間圧延し、その後に比較的低温である800℃で短時間熱処理した箔について、一部に複相ナノ構造が形成していることを確認した。本年度は、この複相ナノ組織がほかの領域で形成されていないかを詳細に調べ、さらにその構造を解析した。その結果、以下のことが明らかとなった。 1.走査電子顕微鏡反射電子像で観察できていた数nmから数十nmの複相ナノ構造コントラストは、チャンネリング現象に起因するものであり、電子ビームの入射角をかえるとコントラストが消失する場合もある。 2.電子ビームの入射角を連続的に変化させる実験によって、試料全面にわたって目的とする複相ナノ構造が形成していることを突き止めた。 3.透過電子顕微鏡による構造解析の結果、次の2種類の複相ナノ構造が存在していた。(1)冷間圧延でパンケーキ状につぶれた比較的粗大なNi_3Al相が、10〜100nmの微細粒に分割したもの。 (2)冷間圧延でNiマトリックス相と見分けがつかなくなった微細なNi_3Alが、1〜10nm微細粒として再析出したもの。 これらの結果により、強冷間圧延と低温短時間の熱処理を組み合わせることで、1〜100nmサイズの微細なNi_3Al相がNiマトリックス相に分散した複相ナノ構造が得られることを明らかにした。
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