本研究は、表面エネルギー差を利用した撥水性パターン表面による液滴分離機能の創製を目的としている。2種類の撥水性分子膜をライン状に形成させた表面上に水を滴下し、傾斜させると、ラインに対し平行と垂直方向とでは水滴の転落挙動は異なることが分かった。このような組成、つまり表面エネルギーの差による異方的な転落挙動と、質量に比例した重力による転落を組み合わせることで、サイズ、比重、組成による液滴の分離を目指している。 今年度は、フォトリソグラフィー技術を利用して、シリコンウエハ上にパターン膜を作製した。フッ素またはアルキル表面官能基をもつシラン系カップリング剤を用いて、CVD法により平滑な自己組織化単分子膜を合成した。さらに、パターンの付いたフォトマスクを通して真空紫外線を単分子膜に照射させて、分解・除去し、その部分だけに別の単分子膜を堆積させ、2種類の単分子膜によるパターン表面を作製することができた。 傾斜させたパターン表面上の水滴の転落挙動を高速度カメラで観察し、転落速度・加速度の異方性を調べた。ラインを横切るように水滴を転落させると、水滴の転落はラインの境界で抑制され、転落速度は小さくなった。また、ラインの幅と水滴の大きさによって、その抑制度合いは異なることが分かってきた。 今後、さらに、液滴分離機能表面の設計のために、単分子膜の種類、パターン幅、パターン表面傾斜角度やパターン傾斜角などを変えて、液滴の転落挙動を観察・解析し、その結果を元に液滴分離表面を作製する。
|