研究概要 |
酸化物中への水溶解反応を検討する対象物質として,希土類をドープしたセリアについて検討を進めた.対象物質のセリアの合成においては,従来行なわれてきた炭酸塩や水酸化物の分解を利用した方法において容易にナノ粒子が得られている現象が,セリウム化合物の水との反応性に深く関与していると考えられたため,セリウムの水溶液中での安定性を熱力学的に取りまとめた電位-pH図を元に合成プロセスを検討することとした.その結果,常温において水の安定領域内で,四価の酸化物(セリア)が三価の水酸化物とともに存在できることが確認された.これは水の安定領域内において,従来の水酸化物のみが安定に存在するという報告や,最近新たに報告された,酸化物のみが安定に存在するという報告と異なる新たな見解である.また,三価の水酸化物の脱水過程がセリアへの酸化反応に関係していることが明らかとなった.これらのことより,合成過程において低温の水溶液中での安定性を考慮したプロセスを採用することにより,セリアへの水溶解量の制御やドーパントとの関係を明らかにする方法であることが提案できた.また,電気化学的な析出方法である酸化物めっきによる薄膜試料の合成が可能であると考えられ,詳細な検討をおこなった結果,電極のアノード酸化によってセリアの薄膜の合成に成功したが,薄膜中への希土類元素の添加は確認できなかった.一方で,水溶液からの析出法ではドーパントの添加が可能であり,これにより合成したセリアナノ粒子を原料とすることで,粒界を制御した多結晶セリアにおける水溶解機構を検討することが可能であることがわかった.
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