コヒーレントな直線偏光Nd:YAGパルスレーザーが溶融材科内に自発的に誘導する周期的エネルギー密度分布(レーザー誘導周期的エネルギー密度分布)を用いて、SiO_2膜上に真空蒸着されたNi薄膜に、直線偏光レーザーを照射するだけで、周期的に配列したサブミクロンNiラインを形成することに成功した。 熱酸化により、表面に40nmのSiO_2膜を形成したSi基板に真空蒸着法によりNiを25nm堆積した。その後、直線偏光Nd:YAGパルスレーザー(波長532nm)を試料に照射することにより、試料表面にレーザー誘導周期的エネルギー密度分布が発生し、その分布に従いNiが凝集し、周期的に配列したサブミクロンNiラインがSiO_2膜上に形成された。 Niラインは、レーザーを100パルス照射することで形成されたが、200パルス照射するとラインが崩れた。一方、Siラインを形成する場合、ライン形成には500パルス以上必要であり、さらに、2000パルス照射してもラインは崩れなかった。このNiとSiのライン形成の違いは、溶融材料とSiO_2膜との濡れ性に関係する。溶融NiのSiO_2膜上における接触角は約120度であり、溶融Siの接触角の約80度と比べて大きい。つまり、Niの場合、Siと比べて濡れ性が悪く、容易に凝集する。そのため、Niラインは、Siラインと比べて少ないパルス数で形成され、また、崩れやすいと考えられる。このことより、サブミクロン金属ラインの形成には、溶融金属とSiO_2膜との濡れ性が大きく影響し、それらを考慮した形成条件の最適化が必要であることがわかった。
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