研究概要 |
微小溶融金属液滴がある部材に衝突し凝固する現象は,溶射技術や冶金技術などの材料加工分野において見られ,凝固した粒子の形状は,衝突速度や温度,および基材の物性など,数多くの因子によって影響をうける.この形状の違いは作製しようとする製品の質に大きな影響を与えることから,凝固した粒子の形状の制御が必要となる.本研究では,溶融金属粒子が基材に衝突し,偏平凝固するとき,その形状に対し影響する因子を解明するために,溶融液滴および基材表面温度径時変化の同時計測システムを構築し,溶融金属液滴の基材上での凝固形態に対する基材温度および基材表面粗さの影響の検討を行うものである.まず,本年度は融点の低い錫一鉛合金を用いて,基材上での偏平凝固中の溶融金属液滴のその場画像撮影および基材温度の径時変化同時計測システムを構築した.システム構築を行うにあたり発生する問題として,収集する画像および温度の同期を行う必要があること,粒子の凝固は長くとも100msには終了することから,それぞれ測定される温度の応答速度を少なくともサブミリ秒とする必要があること,測定される温度の精度を確保すること,の3つの問題が予想される.そこで,システムを,(1)液滴の落下を検知するレーザセンサ,(2)極細解放端熱電対を用いた粒子温度測定システム,(3)極細熱電対を基材に組み込んだ基材表面温度計測システム,(4)高速度ビデオカメラ,の4つで構成した.本システムを用いて溶融液滴の基材上での偏平凝固現象の観察を行ったところ,溶融液滴の偏平の様子が観察でき,同時に液滴と基材表面の温度が計測でき,これにより液滴から基材へ伝達する熱移動の際の熱接触抵抗を推定することが可能となった.
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