研究概要 |
本研究はスパッタ法にて金属の極薄膜を堆積した後、引き続き逆スパッタ(活性ガスのプラスマ照射)することにより、酸化または窒化するという工程を繰り返し、金属化合物薄膜酸化膜・窒化膜など)を成膜する方法を用いて高活性光触媒膜の高速低温成膜技術開発を目的としている。H18年度は、逆スパッタ法の中でも最も簡単な方法である「基板に負のバイアスを印加し発生したプラズマからイオンを引き出し基板に照射する」方法を用いて酸化度・結晶性・基板温度の関係を明確にし、後酸化スパッタ法におけるプロセスパラメータの抽出とその制御要因の洗い出しを行った.以下にその結果を示す。 1.逆スパッタ投入電力に対する「酸化度」及び「成膜速度」の関係は、「酸化度」は逆スパッタ投入電力に比例しているが、「成膜速度」はある地点から急激に低下する。これは酸化膜が過剰な投入電力によりエッチングされ始めていることを意味しており、この領域ではエッチングによる結晶性も低下している。 2.金属Ti膜の膜厚に対する「酸化度」の関係は、金属膜の膜厚が厚くなると「酸化度」が低下(酸化しにくくなる)する。 3.逆スパッタ投入電力と基板温度の関係は、投入電力増加により基板温度も上昇する。 4.逆スパッタ圧力の変化により基板表面へ照射される高エネルギー粒子を制御することで結晶性が向上した。 ことが得られ、「逆スパッタ投入電力」「金属Ti膜厚」「逆スパッタ圧力」が酸化度-結晶性-基板温度が影響を与える要因であることが分かった。これらの要因を制御するプロセスパラメータをまとめると「DC, RF-Power、Ar.O2流量、排気速度」であることが分かった。 また、展開としては逆スパッタ源をイオンによる酸化を主とした「基板への負バイアス電圧印加構造」からラジカルによる酸化を主とした「カップガン構造」への応用を検討し、従来の後酸化方法の問題点と解決方法の整理を行った。
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