本研究は、(1)炭素、水素、酸素を含有する廃棄物(廃プラスチック、廃木材、排紙、シュレッダーダスト等)に酸化鉄を混合したものを高温に急速加熱して無害化し、同時に、(2)水素ガスとCOガス(いずれも燃料ガス)と金属鉄を併産し、(3)炭酸ガスを生成しない新しい廃棄物処理法を開発することを目標としている。平成18年度は、(木材+鉄鉱石)混合物、(ポリエチレン+鉄鉱石)混合物を急速加熱すると金属鉄とH_2ガスが発生し、CO_2はほとんど生成しないことを明らかにした。実験結果は、熱力学平衡計算結果とよく一致していた。 平成19年度は、処理プロセスの操業温度低下に向けて、有機系廃棄物由来炭素の結晶化度が浸炭に及ぼす影響を明らかにするため、炭素源(木材、ポリエチレン、木材チャー、ポリエチレンチャー、グラファイト)と鉄源(金属鉄、酸化鉄)との混合物を1448Kに急速加熱した。得られた金属鉄について、浸炭に伴う凝固点降下の有無を観察した。混合物組成は、金属鉄とチャー及びグラファイトとの混合物では、Fe:C=95:5(重量比)とした。また金属鉄と木材及びポリエチレンとの混合物では、平成18年度に開発した熱力学平衡計算プログラムに基づき、金属鉄と残存する固体炭素の予想量との重量比がFe:C=95:5になるよう組成を定めた。また、処理反応促進に向け、有機系廃棄物由来炭素の燃焼速度を測定した。木材チャー<ポリエチレンチャー<グラファイトの順に結晶性は高くなり、炭素の結晶化度が高いほど浸炭が進行することが分かった。また、COガスの存在が浸炭を促進させることが分かった。一方、炭素の結晶化度が低いほど、燃焼速度は大きく、燃焼反応の活性化エネルギーが小さくなることが分かった。浸炭と燃焼反応を同時に促進するためには、結晶化度を最適にする有機系廃棄物の混合比があることが示唆された。
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