研究概要 |
本研究麺は、多孔性基材の細孔表面に長さ1μm程度の疎水性グラフト鎖(接ぎ木高分子)を付与し、溶媒抽出法で用いられている抽出試薬である塩化トリーオクチルメチルアンモニウム(Aliquat 336)を担持した。多孔性基材に付与されたグラフト鎖は,その片端が細孔表面に固定され,別の片端が自由に伸びている。このゲラフト鎖のつくりだす空間を貴金属イオンの抽出相として利用した。 多孔性基材とじて,細孔径0.4μmの多孔性膜(精密濾過用に市販されている中空糸膜)を採用した。まず,この多孔性中空糸膜に電子線を照射してラジカルを生成させ,エポキシ基を有するモノマー(ここではグリシジルメタクリレート)に浸漬することによって細孔表面にグラフト鎖を付与した。つぎに,グラフト鎖へ高密度にAliquat 336を担持するために,ヒトロキシペンチルアミノ基およびオクタデシルアミノ基をグラフト鎖へ等モル導入した。得られた膜を抽出試薬溶液に浸漬し,グラフト鎖へAliquat 336を担持した。ヒトロキシペンチルアミノ基は,正電荷をもっAliquat 336を静電的に引き寄せてグラフト鎖空間へ取り込み,オクタデシルアミノ基はAliquat 336を疎水性相互作用によりグラフト鎖空間へ保持する役割を分担する。 パラジウム水溶液をAliquat 336担持多孔性膜に透過させたところ,03mol-Pd/kgのAliquat 336を回収できた。また,担持されたAliquat 336の大部分がパラジウムの吸着に寄与していることがわかった。細孔表面に付与したグラフト鎖が,Aliquat 336のもつ金属吸着能力を損なうことなく、高密度に抽出試薬を配列できるフレキシブルな環境を提供したためでる。
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