燃料油と水を乳化混合した乳化燃料滴を燃焼させた場合、燃料油と水の沸点の違いによりミクロ爆発と呼ばれる燃料滴の自己微粒化現象が生じ、燃焼性が向上する。しかしながら、乳化燃料中の分散水滴がミクロ爆発を引き起こすメカニズムに関する検討は十分でない。本研究課題では、油中水滴(W/O)型乳化燃料液滴における燃料油と水の相分離挙動に着目し、乳化燃料滴がミクロ爆発に至るまでの移動現象を実験および理論的に明らかにすることを目的として研究を遂行した。平成18年度は、乳化燃料滴のミクロ爆発挙動に及ぼす分散水滴径の影響を実験的に検討するとともに、乳化燃料滴の伝熱・相分離解析モデルの構築に着手した。 乳化燃料滴のミクロ爆発挙動に及ぼす分散水滴径の影響に関しては、懸垂線に保持した乳化燃料液滴を加熱した場合の液滴温度の測定と高速度ビデオカメラを用いたミクロ爆発挙動の観察を行った。平均水滴径および水滴径分布の異なる2種類の乳化燃料(乳化燃料A:平均水滴径0.96μm、乳化燃料B:平均水滴径=2.86μm)を用いて実験を行った結果、液滴の加熱開始からミクロ爆発が起こるまでの待ち時間に対する水滴径の影響は小さいことが示された。しかしながら、水滴径分布が狭い乳化燃料Aの場合(水滴径範囲=約0.8〜2.0μm)、ミクロ爆発発生時の乳化燃料滴径と液滴温度の間に相関があるのに対し、水滴径分布が広い乳化燃料Bの場合(水滴径範囲=約0.9〜6.0μm)、両者の間に相関は見られなかった。 一方、乳化燃料滴の伝熱・相分離モデルの構築に関しては、分散水滴を考慮した単一乳化燃料液滴内の熱移動をモデル化し、ミクロ爆発に対する水分量および水滴径の影響を検討した。水分量とミクロ爆発に至るまでの待ち時間に関しては定性的な相関が見られたが、解析モデルの妥当性をより詳細に検証し、モデルの改良を行う必要があることが示唆された.
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