研究概要 |
本研究はキャピラリー拡散管を用い,臨界点近傍の二酸化炭素について,高精度な拡散測定手法の確立とその実測データの蓄積を目的とする.今年度の成果としては,以下の三点が挙げられる. 1.臨界点近傍用の拡散係数の測定装置を製作: 圧力をより高精密にコントロールできるシリンジポンプを用い,また新たに高圧用円筒状タンクを高温槽に入れ,実験の温度・圧力をより安定に制御でき,臨界点付近での高精度な拡散測定が可能となった. 2.臨界点近傍用の拡散係数の測定装置の検証: 二酸化炭素の臨界点近傍で、吸着キャピラリーカラムを用い,本研究グループが提案したクロマトグラフィックインパルス応答(CIR)法より,測定装置の有効性を実証した.同時に,臨界点付近では,Taylor法よりCIR法の方が格段に優越であることを始めて実験より明らかにした. 3.臨界点近傍で拡散係数の実測: (1)ミリストレイン酸とそのエステル(低分子脂質),およびクラウンエーテル(幅広い分野への応用が期待され)について35-70℃,8-30MPaの範囲で二酸化炭素中の拡散係数と分配率を求めた.また,分配率から部分モル体積を導出した.さらに,分子形状の影響を検討し,分子構造による拡散係数への影響も実測できることを始めて示した. (2)これまでのTaylor法では不可能とされていたが,CIR法を用いれば,混合物質のそれぞれの拡散係数を同時に正確に測定できることを始めて明らかにし,複数応答ピークから各種物質の拡散係数を同時に決定できる手法を提案した. (3)物質によって,応答曲線にTailingが生じたり,また注入量を増やしても,Tailingが生じたりする.これは溶質の線形吸着では説明困難であり,拡散管内壁での溶質と固定相との間ではラングミュアタイプの吸着になっている可能性を示唆しているように思われる.
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