ナノカーボンの超音波合成について、本年度は以下に示す3つの観点から研究を行った。 1.有機溶媒中のフラーレン超音波合成の追試と異なる音場による反応効率の検討 液体ベンゼンへの超音波照射によるフラーレンC_<60>の合成実験を追試した。その結果、固体は析出したが、質量スペクルにC_<60>は確認できなかった。高速液体クロマトグラフでの分取・精製が必須であるとの情報を得て、購入予定備品を変更して分取装置(フラクション・コレクター)を購入した。分取にはシステムコントローラーも必要であるため、次年度に購入次第、C_<60>の確認を行う予定である。 また、この系について異なる音場条件の下で実験を行った。その結果、20kHzの超音波ホーン(進行波音場)では固体が析出したが、200kHzの定在波音場では何の変化も見られなかった。 2.水中のナノカーボン超音波合成の検討 微量濃度ベンゼン水溶液への超音波照射を行い、ナノカーボンの合成条件を検討した。水溶液は照射後数分で黄色に変化し、数時間後には固体が析出した。透過型電子顕微鏡観察により、固体はグラファイトのナノ粒子が凝集した形態だとわかった。また、質量スペクトル分析により、C_<60>の質量付近にピークを示す巨大分子が含まれていることが明らかになった。水溶液中では、有機溶媒と逆に、20kHzホーンでは何の変化も起こらず、200kHz定在波音場でのみ固体が析出した。また、ベンゼン濃度が低いほど固体の析出時間が早かった。 3.ガスを炭素源とする水中ナノカーボン超音波合成の検討 水中のナノカーボン合成実験に際し、一切の有機溶媒を使用せずに、ガスからの固体カーボン生成を検討した。その結果、アセチレンガスを用いると、ベンゼン水溶液と同様に固体カーボンが得られることを明らかにした。アセチレンとともに希ガスを加えることで、固体の析出時間およびナノ粒子の粒子サイズが変化した。
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