近年、ソフト溶液プロセスと呼ばれる環境負荷の少ない溶液反応を用いた高機能材料の作成法が注目され、研究が盛んに行われている。本研究では、有機溶媒及びフッ化物を含まない外部エネルギーを必要としない常温・常圧の水溶液プロセスを用いた金属酸化物及び水酸化物ナノ粒子の作成法の開発を行った。自発反応である金属強酸塩の加水分解反応を、イオン交換樹脂によって強酸イオンを除去することによって、金属酸化物および水酸化物のナノ粒子を得た。このプロセスで作製したナノ粒子は、その時長によって(1)ゲル作製グループ(2)低結晶性粒子作製グループ(3)高結晶性粒子(4)その他グループの4つのグループに分けることができるということがわかった。このグループ分けには、金属酸化物および水酸化物の溶解度とその表面エネルギーが深くかかわっていると考えられる。 続いて、このナノ粒子作成法における粒径制御法の開発を行った。ナノ粒子の粒径を制御するには、(1)イオン交換樹脂の量を変化させる(2)不純物イオンを導入するという二つの方法があるということがわかった。粒子の均一性にはまだまだ問題があるものの、有機溶媒及びフッ化物を含まない溶液系で、エネルギー負荷が非常に含まない条件で酸化物及び水酸化物ナノ粒子の粒径を制御できたことは非常に有意義な結果であるといえる。 最後に、薄膜作製のためには粒子がよく凝集することが必要であるが、そのために必要な条件の考察を酸化チタンを例として行った。酸化チタンは等電位点よりも低いpH溶液中では正の表面電価を持ち、等電位点よりも高いpH溶液中では負の表面電価を持つ。酸化チタンが負の表面電価を持つ場合、酸化チタンナノ粒子が凝集することはないが、正の表面電位を持つ場合、溶液中の強酸イオンを吸着して表面電価をキャンセルし、凝集性がよくなる。このような条件で酸化チタン粒子を作製した場合、マイクロオーダーの大きさを持つ酸化チタン粒子が作製された。以上の結果により、酸化チタン薄膜を作成する場合は、酸化チタン粒子の等電位点よりも低いpHを持つ溶液で作成する必要があると考えられる。
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