本課題研究において生体分子としてDNA(Na塩型)に着目した。シリ力種、DNAともシリカ合成条件下では負に帯電している。 H18年度において、両者の相互作用を促進する為に正に帯電可能な官能基を有するSi源、(CH_30)_3Si(CH_2)_3N^+(CH_3)_3C1^- (TMAPS)、をシリカ源の一部に用いることでシリ力種との相互作用を実現し、さらにDNA-シリカ複合体からDNAを取り除き、多孔質シリカを得ることに成功した。 H19年度では、(1)まず、TMAPS以外の分子を用いることができるか検討した。一つの分子内に二つのアミノ基を有するエチレンジアミン、1-(2-アミノェチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどを用い、相互作用の状態、得られるシリカのメソ構造、形態などを精査したが、TMAPS以外を用いた場合では不定形粒子のものしか得られなかった。(2)合成過程におけるDNA分子の状態を円二色性分散計(学内共通装置)を用いて調査した。合成後のサンプルを測定したところ、DNA由来のシグナルを示し、DNAの特異な構造は保持されていたことが分かった。(3)DNA分子を鋳型に用い螺旋状細孔を有するメソポーラスシリカを調製し、アミノ酸誘導体などをターゲットにした吸着分離テストを行う予定であったが、至らなかった。 一方、生体分子として従来のアミノ酸含有界面活性剤に着目し、アミノ酸の種類と得られるシリカの細孔構造について検討した。得られたシリカを用いて不斉吸着テスト、不斉触媒反応などを行った結果、有意義な成果を得ることができた。
|