本研究では、ゼオライト及び酸化物へ、プローブ分子としてCOとピリジンを吸着させ、透過型赤外分光法により吸着状態を観測・解析することにより、固体触媒の酸性質の評価を行った。触媒は、700〜800Kで酸素・水素を用いて前処理を行った。前処理後の触媒に、150KでCO吸着を行った後、排気しながら昇温することによりCOを脱離させ、同じ触媒に420〜470Kでピリジン吸着を行った。 HYゼオライトへのCO吸着を行った結果、ゼオライトの酸性水酸基(ブレンステッド酸点)への吸着に帰属されるピークに加え、ルイス酸点への吸着に帰属されるピークがわずかに観測された。同じ試料へのピリジン吸着の結果からも酸性水酸基への吸着とルイス酸点への吸着が確認された。ゼオライトの酸性水酸基は、高温で真空排気することによりOH基が脱離し、ルイス酸が生成するといわれているが、高温排気処理前にもHYゼオライト上にルイス酸点が存在することが明らかになった。高温での排気処理を行い、ルイス酸が存在すると考えられるHYゼオライトへのCO吸着の結果、ルイス酸点への吸着に帰属されるピークが排気処理前のものに加え、新たにもう1本観測された。ルイス酸点への吸着に帰属される2本のピークが何に起因するものなのかを調べるために、アルミナとシリカアルミナへのCO吸着をゼオライトの場合と同様の条件で行った。その結果、ゼオライトを高温排気処理する前にも観測されていたルイス酸点は、アルミナのルイス酸点と同じであると帰属され、HYゼオライト上には、ゼオライト骨格外にAlが酸化物として存在していることが示唆された。一方、高温排気処理後に観測されたルイス酸点のピークはシリカアルミナでも観測され、ゼオライト骨格中のOH基が脱離し、生成したルイス酸点であることが分かった。
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