本研究は、次世代の排熱利用型空調システムとして注目されるデシカント空調機の課題点である1)吸着材再生温度(≒排熱温度)の低下、高温・高湿度外気条件下における除湿能力の大幅な低下、2)除湿ローター内後流部分における水蒸気濃度低下に伴う吸着効率の低下の解決に向け、吸着材の再生過程に水の直接・選択加熱効果を有するマイクロ波照射を組み込んだ「マイクロ波アシストデシカント空調システム」を提案し、その基礎検討を行うものである。 平成18年度は、水蒸気脱着に対してマイクロ波照射の適用が最適な吸着材の選定を目指して、シリカゲル粒子にマイクロ波照射を行い、脱着速度・脱着率を指標とした実験的検討を実施した。具体的には、シリカゲル(粒子径0.50-1.0mm)0.5gを充填したマイクロ波照射型吸・脱着装置を使用し、温度30℃、相対湿度40%の窒素ガス流通下においてマイクロ波加熱(出力:200-800W)ならびに温風加熱(温風温度:47℃)による脱着実験を行った。この結果、マイクロ波加熱により、シリカゲル層の温度上昇に伴い生じる水分の脱着平衡量以上の過剰脱着が生じることが確認された。しかし、過剰脱着効果は実験開始13min以前では生じないことが明らかとなった。また、マイクロ波加熱の場合、温風加熱に比べて最大で約3倍の脱着速度を持つことが明らかとなった。さらに、脱着速度・脱着率いずれもマイクロ波出力の上昇に伴い増大することが確認された。以上得られた結果とゼオライトの実験結果を比較・検討したところ、吸・脱着の切換サイクルが数分以内のデシカント空調システムにおいては、脱着開始直後から過剰脱着が生じるゼオライトの方がマイクロ波照射に適した材料であるとの結論に至った。
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