本研究は、次世代の排熱利用型空調システムとして注目されるデシカント空調機の課題点である1)吸着材再生温度(=排熱温度)の低下、高温・高湿度外気条件下における除湿能力の大幅な低下、2)除湿ローター後流域における水蒸気濃度低下に伴う吸着効率の低下の解決に向け、吸着材の再生過程に水の直接・選択加熱効果を有するマイクロ波照射を組み込んだ「マイクロ波アシストデシカント空調システム」を提案し、その基礎検討を行うものである。 平成19年度は、前年度得た知見に基づきつつ検討をさらに一歩進めて、デシカントシステムで実際に用いられているハニカムローターを実験対象とし、マイクロ波照射によるローターからの吸着水の脱着挙動を明らかにするとともに、脱着挙動に及ぼすマイクロ波出力、ローター長の影響を、脱着速度・脱着率を指標として実験的に検討した。具体的には、シリカゲルおよびゼオライトが塗布された直径100mm、長さ60〜180mmのハニカムローターを設置したマイクロ波照射型吸・脱着装置を製作し、温度30℃、相対湿度60%の湿潤空気流通下において、マイクロ波加熱(出力:200-800W)ならびに温風加熱(温風温度:80〜120℃)による脱着実験を行った。 この結果、デシカントローターにおいてもマイクロ波(MW)照射による吸着水の脱着が実証されるとともに、MW出力の増大に伴う平衡脱着率、脱着速度の向上を確認した。さらに温風脱着との比較において、実デシカント空調システムにおける吸・脱着切換のサイクル時間である3分以内では、マイクロ波加熱は温風加熱に比べてローター平均温度の上昇を抑制しつつ、温風脱着と遜色ない脱着速度を達成できることが確認された。これらにより、実サイクル運転における除湿量の増大に対するマイクロ波照射の有効性が示唆されるとともに、提案システムの実現に向けた基礎データの取得がなされた。
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