含浸法で調製したCr/SiO_2光触媒を用いることで、水を酸化剤とするプロピレンの光部分酸化反応を検討し、照射光の波長制御による反応生成物選択性について詳細に調べた。λ>200nmのUV光を照射してプロピレンの光部分酸化反応を行ったところ、アセトアルデヒド(AA)とプロピレンオキシド(PO)、二酸化炭素(CO_2)の生成が確認された。つぎに、酸化剤の水を導入せずに反応を行ったところ、全く反応は進行しないため、水が酸化剤として効率よく機能していることがわかる。次に、各波長カットフィルターで光照射波長を制御してこの反応を行うと、反応選択性が大きく変わることがわかった。250nmおよび290nm以下の波長をカットした光照射の場合、この時のみプロピオンアルデヒド(以後、PA)が生成し、POも高い選択性で生成した。この反応選択性の違いは照射波長の違いによるものなのか、照射光量の違いによるものなのか調べるため、照射波長を変えずに光量のみ変化させて反応を行った。その結果、転化率には違いが見られるものの、選択性にはほとんど違いが現れないことがわかった。また、触媒の紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、300mn付近にCr^<6+>の、500nm付近にCr^<3+>の吸収がみられ、特に300nm付近の光を照射したときにPOの生成選択性が増加し、PAがこのときに生成することから、Cr^<6+>がPOとPAの生成に有効であることが示唆された。さらにSiO_2の光吸収とCO_2の光照射波長に対する生成収量のプロットが良く一致することから、CO_2の生成にはSiO_2の光吸収が寄与していることが示唆された。以上のことより、光照射波長制御により光触媒反応における生成物の選択性が大きく変化し、これは各生成物の生成に寄与する活性サイトがそれぞれ存在するためであると推測された。
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