本研究は、近い将来の資源循環型社会のために、グルコースから化学品をえる固体触媒プロセスを開拓することが目的である。生成する化学品として樹脂の原料としても魅力的な乳酸に着目した。グルコースから乳酸への反応機構において、重要な素過程と予想したレトロアルドール反応に触媒活性を示すことを期待して、固体触媒としては塩基性を示すハイドロタルサイトに着目した。今年度の研究ではハイドロタルサイトの中でも特に、マグネシウムとアルミニウムの化合物(Mg/Al=2〜8)を沈殿法で合成し、粉末X線回折測定、元素分析、TG-DTA、窒素吸着測定などで物性評価を行い、触媒に用いた。50℃の希アルカリ性水溶液中において、グルコースの反応を行ったところ、アニオンサイトをOH基としたブレンステッド塩基型ハイドロタルサイトが乳酸生成に特異的に活性を示すころを見いだした。反応中にマグネシウムイオンなどの溶出はないこと、生成した乳酸の数はハイドロタルサイトの活性点(OH基)の数よりも多いことを確認した。グルコースからの乳酸生成を無機系の固体触媒反応で行った報告例はなく、本研究で初めて明らかとした。そのハイドロタルサイトの焼成温度を60-450℃で変えると、焼成温度が高くなるにつれてブレンステッドOH基が増えることを水溶液中での定量分析により示した。また、そのOH基の数と乳酸生成速度に比例関係があることを示し、そのことからブレンステッドOH基が活性点である可能性が高いと考察している。また、乳酸収率は最高で45 C-%を得た。目標として申請書に明記した乳酸収率50 C-%はほぼ達成できた。ただし、副生成物に関してはまだ大部分が未同定であり、次年度はさらなる乳酸収率向上のために、副生成物の同定を含む反応メカニズムの解明、および固体触媒の改良と探索を行う。
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