再生可能なバイオマス資源を化学原料に変換する化学プロセスの開拓をめざし、グルコースからの乳酸生成に有効な固体触媒反応に関する研究を実施した。以下の2つの研究成果をあげ、学術論文などで発表した。 (1)OH^-イオンで置換したハイドロタルサイト固体触媒によるグルコースからの乳酸生成 グルコースから乳酸を各種の固体酸、固体塩基触媒を用いて検討した。この反応は水溶液中で1モル程度以上のアルカリ雰囲気で乳酸が得られることは知られているが、アルカリ廃液が問題である。触媒反応は、固定床流通式反応装置を用い、典型的には反応温度50℃で行った。その結果、Mg-Al型ハイドロタルサイトを水和処理してアニオンサイトをOH^-イオンで置換した触媒が有効であり、固体触媒的にグルコースを乳酸に最大収率40%で変換することを見いだした。その活性化エネルギーはNaOH触媒より低く、均一系触媒と反応メカニズムが異なることが示唆された。また、Mg/Al比を2〜∞の間で変えてハイドロタルサイト触媒を合成し、その結晶構造、比表面積、有効塩基量などを分析・測定した。乳酸生成に対して、Mg/Al比が4もしくは5の触媒が最適な表面OH基濃度を持つことを明らかとした。 (2)グルコースを高い原子効率で乳酸とグルコン酸に化学変換する固体触媒プロセスの開発 グルコースからの乳酸生成において、(1)のハイドロタルサイト法および従来のアルカリ水溶液法ともに、50%もしくはそれ以上の複雑な副生成物を生じた。そこで、塩基触媒反応と酸化触媒反応を同時に進行させることにより、高い原子効率で乳酸とグルコン酸を同時に得ることを検討した。その結果、塩基性触媒とPt/C触媒を共に用いた触媒反応プロセスで、グルコースから乳酸とグルコン酸をそれぞれ45%以上(原子効率90%以上)で得ることに成功した。
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