研究概要 |
ある種の微生物はその体内にpolyhydroxyalkanoate(PHA)を蓄積する。これは生分解性プラスチックや医療材料への応用が期待されている。従来のPHA合成は微生物そのものを用いる発酵法により行われてきたが、PHAのモノマー構造や分子量をコントロールを可能とするin vitro PHA合成系の構築について検討した。昨年度の研究成果よりacetyl-CoA synthetase(Acs)の高い基質特異性のため合成されるモノマーが制限されていると考えられた。そこで本年度は新たなモノマー合成酵素としてのCoA transferaseの可能性について検討した。E.coli由来YdiFはCoA transferase活性を有することが報告されていた(J.Biol. Chem.(2005)280, p42919)ため、ヒスチジンタグシステムにて精製し活性試験を行った。活性試験は反応生成物であるCoA誘導体を逆相クロマトグラフィーにより検出し行った。YdiFはE.coliにて高発現でき精製することもできたが、文献に記載されているような活性を確認することが出来なかった。次にClostridium propionicum由来Propionate CoA transferase (Pct)およびalanine CoA transferase (Act)について検討した。その結果どちらもE.coliにて発現させ精製することができた。活性試験の結果、acetyl-CoAとpropionateや3-hydroxypropionate、3-hydroxybutyrateといった有機酸を反応させるとそれらをCoA誘導体へと変換できることが示された。これらCoA transferaseとAcsおよびPHA synthaseを組合わせることでPHAを生成させることに成功した。
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