昨年度の本研究において、アユ腸内フローラからアシル化ホモセリンラクトン(AHL)分解細菌Shewanella sp.MIB015株を単離し、本菌株からAHLアシラーゼ遺伝子(aac)のクローニングに成功した。本年度は、aacの機能解析およびクオラムセンシング阻害効果の検討を行った。aacをpGEM-TeasyベクターのT7プロモーター下流に挿入したプラスミドを構築し、大腸菌BL21(DE3)株に形質転換後にIPTGにより発現を誘導し、様々なアシル鎖の構造を持つAHLに対する分解活性を調べた。その結果、最もアシル鎖長の長いCl2-HSLに対する分解活性が最も高く、アシル鎖長が短くなるに従って分解活性が低下することが明らかとなった。さらに、アシル鎖部位の3位の炭素がオキソ体となったAHLに対する分解活性も調べたところ、未置換のAHLに比べて分解活性が低下することが明らかとなった。これらの性質は、既知のAHLアシラーゼの性質と似通っていたことから、MIB015株由来Aacも既知のAHLアシラーゼと同様の性質を有することが明らかとなった。次に、Aacによる魚病細菌のクオラムセンシング抑制効果について検討を行った。魚病細菌Vibrio anguillarumはAHLを介したクオラムセンシングによりバイオフィルム形成などの病原性を制御している。そこで、V.anguillarumにAac発現プラスミドを導入したところ、AHL生産が消失し、バイオフィルム形成量が親株の約40%にまで低下していた。以上より、Aacの導入は魚病細菌のクオラムセンシング阻害に有効であることが明らかとなった。
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