研究課題
本年度は、AHL分解遺伝子を用いた植物病原菌の病原性抑制効果の検証を行った。さらに、新たなAHL分解活性を有する細菌のクローニングも行った。植物病原菌に導入するAHL分解遺伝子として、Bacillus cereus由来のAHLラクトナーゼ遺伝子(aiiA)を用いた。aiiAを広範囲宿主ベクターにクローニングし、このプラスミドを様々な植物に感染する植物病原菌Pantoea ananatis SK-1株に導入した。その結果、aiiAを導入したSK-1株はAHL生産が完全に消失し、病原性因子と考えられる菌体外多糖生産も低下していた。さらに、aiiAを導入したSK-1株をタマネギ葉に接種したところ、タマネギ葉への感染がほとんど見られなくなった。以上より、植物病原菌Pananatなによる感染症の防除に、AHL分解遺伝子が有用であることが明らかとなった。また本年度は、昨年度まで実施したアユ腸内フローラ以外の環境中から、AHL分解活性を有する細菌のスクリーニングを行った。スクリーニング対象として、植物葉面に生息する非病原性共生菌を用いた。植物葉面からランダムに約100株の細菌を単離し、それぞれについてAHL分解活性を調べた。その結果、16株のAHL分解細菌を単離し、それら全てが様々なアシル基構造を有するAHLに対して高い分解活性を有することが明らかになった。また、AHL分解細菌の細菌種を同定したところ、大部分がこれまでに報告のない、新規のAHL分解細菌であることが明らかとなった。今後は、これらのAHL分解細菌を植物病原菌に対する拮抗微生物として用いることで、新しい植物病防除技術へ発展する可能性が考えられる。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 72
ページ: 1887-1893