本研究では、創薬分野において注目を集めている膜貫通タンパク質を、磁性細菌から得られる脂質二重膜で覆われた磁性粒子(磁性細菌粒子)上に機能を保持した状態でアセンブルすることを目指している。本目標を達成するために、膜貫通タンパク質を磁性細菌粒子上に局在させるためのアンカーの検討、また膜貫通タンパク質を局在させた粒子表面の脂質・タンパク質のリアレンジによるターゲット膜貫通タンパク質の機能化を行うことを目的とした。前年度に検討した発現法により膜4回貫通型のテトラスパニンファミリーに属するCD81の磁性細菌粒子上への発現を試みた。粒子膜に強固に結合しでいる磁性細菌粒子膜由来のMms13タンパク質のC末端にCD81の全長または細治外領域(ED1)を融合し、融合タンパク質を磁性細菌に導入した。ED1をディスプレイした粒子においては、磁性細菌粒子膜に高発現していることが確認できた。次に粒子膜にアセンブルされた膜貫通タンパク質の機能性の向上を目的として、粒子膜の改変を行った。磁性細菌粒子上の膜表面には粒子合成に関わるタンパク質など、表在または貫通タンパク質が多く存在する。これらのたんぱく質は目的の膜貫通たんぱく質の解析において、擬陽又は擬陰的な反応性を示す可能性がある。そこで磁性細菌粒子に対し、様々な界面活性剤処理を施し、たんぱく質の除去を行った。界面活性剤にCTABを用いることにより、粒子膜に強固に結合しているMms13アンカー分子と融合した目的タンパク質は特異的に粒子に残り、また他のタンパク質は除去されていることが示された。さらに、界面活性剤により除かれた脂質を補うために、ホスファチジルコリンを添加した。その結果、分散性が回復し目的タンパク質の機能も保持されていることが示された。
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