異波長予備照射方式とは、波長の異なるレーザービームを、適切なタイミングで照射することにより、宇宙用パルスレーザーアブレーション推進の性能を飛躍的に向上することを目的とする。レーザーアブレーション推進は、原理的には、固体表面上にレーザービームを照射し、噴出したアブレーションジェットにより推進力を得る。レーザービームを用い、遠隔的なエネルギー供給を行うことができるため、スペースデブリ軌道変換などへの応用が期待されているが、依然真空中では十分な推進性能が得られておらず、-性能を向上させる新方式の開発が求められている。本研究では、可視光レーザーパルス(Nd : YAGレーザー第2高調波、波長:532nm)を予備照射し、効率良く固体表面を融溶・気化することにより、表面上に大量の気体推進剤を供給する。続いて赤外レーザーパルス(Nd : YAGレーザー基本波、波長:1064nm)を入射し、表面上の気体推進剤を即座に絶縁破壊した後、レーザーデトネーション波を形成することにより、その背後の高温・高圧領域が推進力を発生させる。 これまで炭酸ガスレーザーを用い、金属及びポリマー材の推進インパルス特性を実験的に調べ、雰囲気圧力及びレーザーパワー密度に対する推進インパルスの依存性を明らかにした。(研究成果を学術雑誌に投稿予定)ごく最近、大気中ではあるが、Nd : YAGレーザーを用い、基本波による大気の絶縁破壊特性、第2高調波の金属アブレーション効率を確認した。また、現有のNd : YAGレーザーを用い、アルミ板面上に波長532nmのレーザーパルス照射に対して、数十ナノ秒遅れて波長1064nmのレーザーパルスを照射した際に、固体表面上でのレーザーアブレーションによって発生する力積を計測する実験系を構築した。
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