本研究の計測方法で差圧測定が可能であることの検証実験を行った。アクリルケースにパンチングメタルを張り、その表面に薄膜を張る。アクリルケースには導圧管が仕込まれており、アクリルケース内部の圧力を変えることができる。アクリルケース内外の圧力差により、薄膜は変形するが、その表面形状をキーエンス製高速高精度CCDレーザー変位計LK-G30で計測する。薄膜は、圧力応じて大きく撓む素材が望ましく、様々なフィルムを購入して実験を行った結果、ニチバン製の防水フィルムが最適であった。レーザー変位計LK-G30はレーザーが照査された1点の変位を計測するが、膜の撓みを計算するには、変位の線分布を計測する必要がある。そこで、シグマ光機製トラバース装置でアクリルケースを移動させ、変位の線分布を測定した。膜の撓みと圧力の関係を調べるため、以下1から5までの手続きに従い、較正曲線の傾きを求めた。1.導圧管内の圧力を大気圧として、表面形状を測定した。2.導圧管内の圧力を1mmH_2O(9.8Pa)から5mmH_2O(49.0Pa)まで、1mmH_2O(9.8Pa)おきに変化させ、表面形状を測定した。3.加圧時の変位の測定値と大気圧での変位の測定値の差分を計算することで、膜の撓み量を求めた。4.中央付近の高さの平均をとり、その値を所定の圧力に対する膜の撓み値とした。5.原点を通る条件での最小二乗法を行い、傾きを計算した。この傾きを撓み値に掛けることで、圧力が計算できる。続いて、導圧管内を、適当な圧力に加圧し、水柱マノメータと本研究の測定方法で計測した。測定は23回行い、差圧計での計測値との差の二乗平均平方根を計算した。水柱マノメータの場合、二乗平均平方根は0.24Paであった。本研究の計測方法で10個の穿孔を用いて圧力計測を行った結果、二乗平均平方根の平均値は0.86Pa、分散は0.17Pa、最小値は0.66Pa、最大値は1.28Pa、となった。これらの結果から、本研究の方法により、2Pa程度の不確かさの範囲で圧力が計測可能であるといえる。
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