研究課題
本研究課題の目的は、宇宙機システムに発生した不具合を運用者自身が発見し、同定し、原因究明することを、計算機による情報提供によって支援する方法を確立することである。研究初年度である平成18年度は主に、人工衛星テレメトリの次元削減に基づく可視化技術の研究開発に取り組んだ。一般に衛星テレメトリは、数百〜数千個の変数から構成される超多次元時系列データであり、人間である運用者が直接的に監視することが極めて困難である。そこで、研究代表者らは、機械学習分野において近年進展著しい非線形次元削減(non-linear dimensionality reduction)技術を応用し、膨大なテレメトリデータを2〜3次元の低次元空間に写像することによって、衛星システムの大局的な活動状況を人間が容易に視覚的に理解することを可能にした。実際に、宇宙機関より提供された過去の衛星テレメトリデータにこの技術を適用したところ、得られた低次元空間において、「昼」「夜」「食」に対応する3つの衛星運用パターンがクラスターとして出現するという合理的な結果が得られ、提案する可視化法の妥当性が示された。また、この実験では、さらに興味深いことに、例えば本来「昼」の運用が行われているはずの日時のデータが「食」の運用パターンクラスター付近に現れるような所謂「外れ点」(outlier)がいくつか発見され、詳細な解析を行ったところ、そのような外れ点では、軌道修正などの特殊な運用を行っていることが分かった。この事例は、提案手法が膨大な過去のテレメトリデータからの特異な運用パターンの発見を容易にする効果があることを示している。
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Proceedings of SICE-ICASE International Joint Conference(SICE-ICCAS)
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