本研究課題の目的は、宇宙機システムに発生した不具合を運用者自身が発見し、同定し、原因究明することを、計算機による情報提供によって支援する方法を確立することである。研究2年目である平成19年度はこの問題に対して、(1)確率的推論に基づくアプローチ、(2)データマイニングアプローチ、の二つの対極的な方法論を並行して展開し、様々な宇宙機検知・診断問題に適用することによって両者の特徴を明らかにした。 前者は、事前に用意した確率的なシステムモデル(状態遷移モデルと観測モデルから成る)を用いて逐次的に得られる観測データからシステムの状態を推定する手法である。姿勢制御系のようにダイナミクスが既知であるようなサブシステムに対しては正確かつ迅速に異常を検知し原因を同定することができる反面、事前にモデル化が困難であるようなサブシステムには適用が難しいことが確認された。 一方後者は、過去の正常時データからシステムの正常な挙動パターンを自動的に学習し、それを用いて新たなデータを監視することによってシステムの異常や疑わしい挙動を検知する技術である。事前にシステムモデルを用意しなくて良いため適用範囲が極めて広いという長所を持つ反面、獲得された挙動パターンの正当性検証や学習時における計算コストの削減などの問題が確認された。
|