研究課題
本研究課題の目的は、宇宙機システムに発生した不具合を運用者自身が発見し、同定し、原因究明することを、計算機による情報提供によって支援する方法を確立することである。最終年度である平成20年度は、主として、前年度までに取り組んできた確率推論、および、統計的データ処理に基づく異常検知法によって高次元宇宙機テレメトリデータ中の「疑わしい」現象、パターンをいかにして運用者にとって理解し易い形態で提示し、高度な異常診断を支援するか、という問題に取り組んだ。より具体的には、近年、機械学習分野において進展著しい次元削減技術に着目し、様々な線形・非線形次元削減手法を用いて、データを次元削減した後に再度復元し、オリジナルデータと比較したときの差異、すなわち、再構成エラーの大きさを評価することによって、システムの異常を検知するとともに、多数の観測変数のうちのどの変数がその異常にどの程度寄与しているのかを提示する技術を開発し、過去の宇宙機の実テレメトリデータに対して適用実験を行い、その有効性を確認した。この研究の特筆すべき知見として、大規模複雑な宇宙機システムの挙動をモデル化する上では、非線形な次元削減手法が有利であるという当初の予想に反して、複数の局所線形モデルを混合した手法が、異常検知性能および計算効率の両面において、他の比較手法を凌駕するという結果が得られた。これは、宇宙機システムのような大規模人工システムでは、いくつかの異なる運用モード間を非連続的に遷移しつつ、それぞれの運用モード内においては安定状態を中心として比較的線形に状態が遷移するように設計されていることを反映していると考えられる。今後は、今回の研究の成果を活用し、関係機関とも協力して、より実用的な宇宙機運用監視システムの実現を目指す予定である。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
TRANSACTIONS OF THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES, SPACE TECHNOLOGY JAPAN 7
ページ: Pf_11-Pf_16
日本ロボット学会誌 27
ページ: 502-505