研究概要 |
宇宙用太陽電池アレイに対し, 物体の超高速衝突により誘起される放電を原因として, 恒久的持続放電が発生するのか, またその発生条件は何かを明らかにすることを目的とし, 二段式軽ガス銃を用いた超高速衝突実験を行った. 飛翔体は直径3mmのアルミ球, 衝突速度は秒速2〜5kmとし, 外部回路により発電状態を模擬した太陽電池アレイに衝突させ, 放電時の電圧・電流履歴をモニターすると共に, 衝突時に発生するプラズマをトリプルプローブ法により計測した. 得られた成果を以下にまとめる. 衝突誘起プラズマ ・衝突位置付近では, 60〜110μs程度の間, 地球低軌道のプラズマ環境(電子密度 : 1×10^<11>m^<-3>)より高密度のプラズマに曝されることがわかった 衝突誘起放電 ・一時的持続放電が発生するためには, イオンの衝突により, 基板に十分なエネルギーを与える必要があり, この衝突するイオン数の積算値は衝突速度の2乗に比例して増加することがわかった ・衝突誘起放電により恒久的持続放電発生の可能性がある電圧, 電流条件は, 40V, 1.8A以上で, 放電中の消費電力が110Wを満たす場合であることがわかった 太陽電池アレイの高電圧化に向けて注意すべき点 ・近年, 衛星のバス電圧は50Vから100Vに移行する傾向にあり, そのため, 太陽電アレイが100V発電となり, ストリングの電流値が2Aこえる場合には, 太陽電池アレイの面積の約半分が衝突誘起放電による恒久的持続放電の発生条件を満たしてしまう. よって, 衛星運用の信頼性を確保するために, 定常的な帯電・放電試験に加え, セルを貫通するサイズの飛翔体を用いた衝突誘起放電試験を実施する必要性がある ・恒久的持続放電の発生を防止する根本的な対策として, セルと基板の間の放電を避けるために, 基板に導体を用いないことが有効である. また, 太陽電池セルの直下に電位差の大きなハーネスを配置しないといった工夫も必要である
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