本研究は、来るユビキタスネットワーク社会において、小型地上端末による移動体衛星通信を実現させるための大型アンテナを備えた通信衛星の革新的な軽量化を図ることを目標とする。その実現を目指して、固体構造物ではなく微小物体の分散体からなる柔軟構造で通信機能を構成するために、マイクロ波帯レンズアンテナ機能を微小物体群で構成することを検討した。大型アンテナと等価になる微小衛星集団の配置を検討するとともに、次年度の準備として、アンテナ工学や衛星帯電のみならず、各微小衛星の設計で必要な物性物理・数理科学・宇宙航行・制御工学に関する情報収集を書籍等購入及び学会参加等により実施した。微小衛星を少ない軌道制御外力で整然と配置させるためには、地球赤道面からの軌道傾斜角がゼロ度の円軌道である静止軌道に、あえて軌道傾斜角と離心率に一定な微小値を持たせつつ軌道傾斜の方向と離心の方向とを連動させることで、静止軌道上を公転する仮想物体を原点とする回転座標系において、その原点を静止軌道公転周期で1周回する楕円軌道群を構成することができる。したがって、離心率を同じとし、長軸と短軸との交点を共有するいくつかの楕円族の周上に配置されたフェーズドアレイアンテナと同等のレンズアンテナを仮定することができる。しかし、アンテナの指向特性を表すアレーファクターを解析したところ、微小物体の間隔が波長程度のオーダーより格段に大きくなった場合にグレーティングローブによる不要波及び損失の問題を解消するに至らず来年度以降への課題とする。
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